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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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はじめてのどくしょかんそうぶん

投稿日:2008年10月02日(木)

どくしょかんそうぶんってなに、と母に聞くと「えー。わからない」と答えた。わからない、では困るのだ。初めての夏休み、初めての宿題がどくしょかんそうぶんとやらだからだ。

本を読んで何かを書くことはわかっている。夏休みが始まる前に、クラス全員が図書室に行って一人一冊、本を借りた。借りた本は夏休みの間に読んで、どくしょかんそうぶんを書くのが宿題だという。俺は絵本を借りた。題名は覚えていない。どくしょかんそうぶんを書くための原稿用紙も配られた。自分で買う必要はないのがうれしい。

ところが、肝心のどくしょかんそうぶんが何のことだかわからない。わからないはずはなかろうと言われても困る。このときはまだ小学一年生、それ相応の知能と知識しかない。「かんそう」などという抽象的な概念が理解できるはずもないのだ。

ほんをよんでかんそうをかくんだよ、と俺は先生から言われたままを母に言う。でも、かんそうってなに。それがわからない。母にどんなに聞いても「わからない」の連発だ。自分の親だから言うが、ちょっと足りていない。

8月31日も夜の8時を回った。明日から学校だ。どくしょかんそうぶんをなんとしてでも書かないとならない。すでに俺は半泣きだ。もちろん、自業自得なんて言葉はまだ耳にしたことすらない。母が「なんで最後の日にいうの!」と怒り始めた。知るかいな。気づいたら今日だったのだ。夏休みは終わるものだった。ただそれだけだ。

どくしょかんそうぶんが何のことだかわからない俺と母が出した結論は、本の丸写しだ。本に書いてあることをこの原稿用紙に書き写せばいいんじゃないの、と母が思いついたのだ。繰り返すが、この当時、「かんそう」という言葉が何を示しているのかは俺にはわからなかった。だから、母の言葉に納得して、借りてきた本の文字を原稿用紙に一文字ずつ書き写していった。本といっても絵本だ。小学一年生レベルの絵本なら、文章量なんかたかが知れている。おそらく、今書いているこの文章の一段落文もないかもしれない。でも、このときの俺にとっては、先のまったく見えない、途方もない作業だったのだ。

途中から母が俺の字を真似ながらかわりに書いてくれた。時計の針が指す時間は、小学一年生の俺を不安にさせるだけ進んでいた。もう、子どもの時間ではない。テレビでは見たこともないドラマをやっている。こんな夜中にまで起きている子どもは、世界じゅうで俺だけかも知れない。漠然とした罪悪感と不安感の入り交じった気持ちが涙にかわって目から流れ落ちた。(たかが夜の9時ごろなんだけどね)

「どくしょかんそうぶん」という音の響きが「読書感想文」という言葉に置き換わるのは、それからずいぶん経ってからだった。



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無題

読書感想文。自分も苦しんだ記憶があります。文章を本格的に書きはじめたのは、この数年のことでして、実は、昔は国語が苦手でした。
 しかし、「読書感想文」って制度そのものに問題があると思います。なぜなら、みんなあらすじを書くでしょう。それって、「先生に知らせてあげよう」っていう意識が強いんだと思います。子供たちは、先生が知らないと思ってますから。
 だから、数冊ぐらい本を指定して、「先生はみんな読んでますよ」と生徒に伝えた方がいいと思います。もしも、そうしてくれたら、私の「感想文」もあらすじにならなかったかもしれません。もっとも、さらに迷って何も書けなかったかもしれませんけど。

>>uenoさん

uenoさんこんにちは!

読書感想文に苦しんだのはuenoさんも一緒だったのですね。ところで、私と母には「あらすじ」を書くという知恵もなかったことに今気づきました。これはこれで面白い。その後、自分が読書感想文をどういうふうに書いていたのか記憶にないのが、ネタとしては、残念です。

今思うと、学校ってろくに教えもせずにとにかく書かせていませんでしたか。作文にしても読書感想文にしても、子どもは何を書いたらいいのかわからないと思うのです。作文だったら一日の行動を順番に書くだけになりますし、感想文はあらすじになってしまう。しかたないですよね。



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プロフィール

HN:
小瀬朧
性別:
男性
自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
メールでのご連絡は benzine100@gmail.こむ スパム対策なのでこむをcomにかえてください。 


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