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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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投稿日:2024年03月29日(金)

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なぜその先へ行かないのか

投稿日:2009年04月02日(木)

夢は脳内の出来事だ。だから、どんな怖い目に会おうが、奇妙な知らない世界に迷い込もうが、目を覚ましさえすれば助かる。間違っても死ぬことはない。これは判りきったことであり、疑問を持つ必要もない。

それなのに、夢のなかで「これは夢だ」と気づいているときでさえ、ある一定の場所からその先へ進めなくなることがある。進めない理由は単純だ。とにかく「怖い」からだ。

たとえば、最近見た夢では、わりとはっきり「ああ、ここは夢のなかだ」と判っていた。そこは自分の家の居間で、明るい午後の光が差し込んでいた。

夢だと気づいているから、散歩してみようと思った。

居間から廊下に出ると、現実の我が家がそうであるように、老朽化した床板が弱々しく軋む。玄関の引き戸も建て付けが悪く、かなりの力を入れないと開かない。そんなところまで再現しているのだから、夢ってすごいな、と夢のなかで感心していた。

それはともかく、玄関が開かない。外に出たいのにびくともしない。夢だからなのか、腕に力が入らない。しばらくうんうんと唸っていると、不意に背後から黒い影がにゅっと伸びてきた。影は人の手の形になると、私の手を包み込んだ。すると今まで微動だにしなかった玄関の引き戸がすっと開いた。

外は静かな真夏の午後だった。果樹園の木々が青々と茂っていた。この夢をみたときの現実世界はようやく李の花が咲き始めたころだったので、記憶とかなり違う夢の世界は不思議な違和感があった。

そういえば玄関を開けてくれたのは誰だろう、と思ってふり返ると、薄い陰のような、もの寂しげな表情の誰かが玄関の隙間からこちらをじぃっと見ていた。あれはいつも家にいたのだろうか。

風がどっと吹いた。果樹園の木々が一斉にうねった。木の下闇が、異様に暗い。

これは夢だから何も怖くはない、どこまでも歩いていくぞ――と思ったけど、言いしれぬ恐怖感が沸き上がり、果樹園を前に一歩も動けなくなってしまった。

そして、目が覚めた。


こうやって起きているときは、なんで夢のなかでは怖くなるのかさっぱりわからない。ただ歩いていくだけなのにね。何が怖いんだろうね。



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どこで見たシーンだろう

投稿日:2009年02月26日(木)

夜中にふと気づくと、布団の上で自分が誰かに解体されている。
手足が切り取られ、腹は裂かれている。
しかし、腹のなかにあるのは内臓ではなく、機械だ。
はっとして目が覚める。
夢だったのかと安心する。
枕元にネジが一本落ちている。


今朝、うなされていた夢なんだけど、すでにどこかで見たことがある風景に思えてならない。ちなみに、夢のなかの夢というのは頻繁に見る。上の夢にも続きがあって、枕元のネジを見つけた自分はなぜかとても怖くなり、コレは夢なんだ、コレは夢なんだ、コレは夢なんだ……と何回も唱えていた。そうしたら、目が覚めて、やっぱり夢でした、ああよかった、というオチ。

嫌な夢を見たなあ、と起き上がって居間に向かうが誰もいない。時計は朝の7時過ぎを指しているのに、母親も父親も起きてこない。考えられるのは、じつは朝ではなく夜の7時で、両親ともに仕事から帰っていないのだ、という一日寝過ごしてしまった状況だ。

まあ仕方ない。とりあえず両親が帰ってくるまで、部屋でインターネットのチェックでもしているか、と居間をあとにする。ちょうどいい、この夢をネタにBlogでも書こう。すると、なんだか玄関から視線を感じる。見ると、少しだけ開いたドアの隙間から、赤い眼がこちらをじぃっと見ている。

ああ、そうか。

これも夢だった。



と、書いている今のこれは、現実だろうなあ。もう、自信がない。

長い夢

投稿日:2009年01月02日(金)

いろいろ、見てきた。

【太歳を掘る】

 そこは白い墓石が櫛比する墓地だった。青空の下、幾人かの子どもたちが無邪気に遊んでいる。私はその様子を傍らから眺めて微笑んでいた。
 子どもたちは土を掘り始めた。墓地でそんなことをするなんて、子どもたちはまだ恐れを知らないのだなと黙ってみていた。子どもたちの掘る穴はみるみるうちに大きく、深くなっていく。
 一人の子どもが何かを掘り当てた。それは白くてぶよぶよするモノだった。表面には無数の黒い点がついている。傷つけないようにそっと土をどけていくと、それは子どもの頭ぐらいの大きさで、リンゴのような形をしたモノだった。子どもたちは歓声をあげた。
 それは指で触ると作りたてのゼリーのように全体がぶるぶると震える。子どもたちが私に聞いてきた。
「おっちゃん、これなあに」
「それは、太歳かもしれないね」
 太歳は、たしか中国の伝説に登場する謎の生命体だったと思う。
「これってなんかヤバイの?」
「……大丈夫だよ」
 私は嘘をついて、子どもたちの好きにさせることにした。
 誰かが棒でつつくと穴が開いてしまった。しかし、その穴は瞬く間に塞がってしまい、かわりに奇妙な盛り上がりが生まれた。盛り上がりに切れ目ができ、そこからゆっくりと開きはじめ、それは一つの目になった。
 太歳の目がじっとこちらを睨んでいる。



【ロープ】

 巨大な倉庫のような薄暗い場所にいる。立ち並ぶ深緑色のスチールラックにはドライバーやペンチ、ノコギリやトンカチといった日曜大工の用品が大量につり下げられていた。それぞれに値札がついているので、倉庫のようではあるが、ホームセンターなのかもしれない。人の気配はまるでなく、ただ寂寥感だけが充満している場所だった。
 そのとき携帯電話がなった。非常に古い機種だった。10年ぐらい前に初めて買った携帯だ。
「あのね、明日学校でロープが必要なの。なんとかならないかな」
 懐かしい女の声だった。高校時代、同じ合唱団にいたSだ。10年以上も連絡をよこさなかったくせに、こういうときだけは頼ってくるのかと私は気分を悪くした。
「今、ちょうどホームセンターにいるんだ。目の前にロープがたくさん売っている。キミも買いに来ればいい」
 必要なら自分で買いに来いと私は思っていた。携帯電話からは何か返事があるのだが、すでに理解できない言語となってしまっていた。
 私は眼前につるされた緑色のロープの束を眺めながら、Sが来るのをずっと待っている。



【排斥】

 教室で突然、覚醒した。自分を縛り付けていた呪術のような緊縛から不意に解き放たれた。
 そこは懐かしい中学の教室であったが、皆がしていることは、スケッチブックにクレヨンを使ってのお絵かきだった。その姿は、保育園のときの記憶に合致している。一心不乱にクレヨンをこすりつけている同級生たちに向かって、私は一つの提案をした。
「もうあいつのいいなりになる必要はない。自分たちの力で追い出してしまおうじゃないか」
 そのとき私は教壇に立っていた。同級生のはずなのに、まるで自分が教師になったような視線だ。皆が私を不思議そうな目で見る。
「あいつを追い出すための詩を書くんだ」
 教室が歓声に包まれた。皆が教室の黒板や壁や窓に、思い思いの詩を書連ねていく。
 
 
     おまえの瞳が美しいのではない
           そこに映る空が美しいだけなのだ


 そして、教室の扉が開き、あの女教師が現れるのを、皆と一緒に待っている。


 
 

山を眺める夢

投稿日:2008年12月15日(月)

子どもの頃、頻繁に見ていた夢だ。

山を眺めている、ただそれだけの夢なのだが、何回も同じような夢を見るため、夢のなかの景色が現実にどこかにあるのではないかと錯覚するようになった。あるいは、幼児の頃に見た風景が記憶の底に残っていて、それが夢として現れているのかもしれない。どちらにしろ、今まで長いこと生きてきたが、夢に出てくるのと同じ山は見つけられていない。

この夢は、本当に山だけを眺めている、というか山しか見えていないので、たとえば麓がどうなっているかとか見ている自分はどこにいるのかとかはわからない。だから何なんだと自分でも思ってしまう夢の一つだ。

山の夢は、年を取ってからはほとんど見なくなってしまった。

反抗する夢

投稿日:2008年12月06日(土)

何かに反抗する、抵抗するというパターンの夢が多い。多くは反社会的な行動なので、たとえ夢であってもここでそれを語ると犯罪者予備軍のレッテルを頂戴しかねないのでちゅうちょしてしまう。

当たり障りのない夢だとこうだ。

私は異世界のコミュニティに属している。異世界とはいっても、限りなく現実世界に近いようなのだが、人々が住んでいるのは古代の大型戦争兵器のなかだ。それは船のようでもあるし、飛行機のようでもある。ただ、あまりにも巨大なため、誰もそのなかから外に出ることはできなかった。また、外の世界があるのかも危うげだった。

コミュニティには必ず規律がある。規律を破った者には死が待っている。そのコミュニティでは、規律は命よりも大切だったのだ。毎日誰かが、処刑のためだけのプールに突き落とされ、死んだ。プールには得体の知れない異形が棲んでいた。ようするに、餌とされるのだ。

ある日、私はついに我慢がならなくなった。激昂した。幸いなのか、リーダーはひ弱な奴だった。私はリーダーの首を絞めるとそのまま処刑のプールへ連れて行った。水の底から睨む異形を前に、私はリーダーにこう言った。

「ルールを強要するなら、まずおまえが死ね。おまえが死んで見せろ」

しかし、あまりにも力を込めて首を絞めていたので、リーダーは既に死んでいた。失望した私は死体を異形の目の前に放り込んだ。異形はまずそうにソレを食い散らかした。骨の砕かれる音が、なんとなく心地よいリズムに感じた。

リーダーを殺した私を、仲間が取り囲んだ。男も女も聞き取れないぐらいに何かを喚きながら私を非難している。私は徐々にプールの淵へと押されていった。私を殺すつもりらしい。

私は仲間ではなく、異形に向かって声をかけた。

「おい、おまえはもうそこから出てきてもいいんだぜ」

その瞬間、プールから無数の触手が矢のように伸び、次々に人々を貫いた。




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小瀬朧
性別:
男性
自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
メールでのご連絡は benzine100@gmail.こむ スパム対策なのでこむをcomにかえてください。 


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