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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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投稿日:2024年04月20日(土)

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なぜその先へ行かないのか

投稿日:2009年04月02日(木)

夢は脳内の出来事だ。だから、どんな怖い目に会おうが、奇妙な知らない世界に迷い込もうが、目を覚ましさえすれば助かる。間違っても死ぬことはない。これは判りきったことであり、疑問を持つ必要もない。

それなのに、夢のなかで「これは夢だ」と気づいているときでさえ、ある一定の場所からその先へ進めなくなることがある。進めない理由は単純だ。とにかく「怖い」からだ。

たとえば、最近見た夢では、わりとはっきり「ああ、ここは夢のなかだ」と判っていた。そこは自分の家の居間で、明るい午後の光が差し込んでいた。

夢だと気づいているから、散歩してみようと思った。

居間から廊下に出ると、現実の我が家がそうであるように、老朽化した床板が弱々しく軋む。玄関の引き戸も建て付けが悪く、かなりの力を入れないと開かない。そんなところまで再現しているのだから、夢ってすごいな、と夢のなかで感心していた。

それはともかく、玄関が開かない。外に出たいのにびくともしない。夢だからなのか、腕に力が入らない。しばらくうんうんと唸っていると、不意に背後から黒い影がにゅっと伸びてきた。影は人の手の形になると、私の手を包み込んだ。すると今まで微動だにしなかった玄関の引き戸がすっと開いた。

外は静かな真夏の午後だった。果樹園の木々が青々と茂っていた。この夢をみたときの現実世界はようやく李の花が咲き始めたころだったので、記憶とかなり違う夢の世界は不思議な違和感があった。

そういえば玄関を開けてくれたのは誰だろう、と思ってふり返ると、薄い陰のような、もの寂しげな表情の誰かが玄関の隙間からこちらをじぃっと見ていた。あれはいつも家にいたのだろうか。

風がどっと吹いた。果樹園の木々が一斉にうねった。木の下闇が、異様に暗い。

これは夢だから何も怖くはない、どこまでも歩いていくぞ――と思ったけど、言いしれぬ恐怖感が沸き上がり、果樹園を前に一歩も動けなくなってしまった。

そして、目が覚めた。


こうやって起きているときは、なんで夢のなかでは怖くなるのかさっぱりわからない。ただ歩いていくだけなのにね。何が怖いんだろうね。



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プロフィール

HN:
小瀬朧
性別:
男性
自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
メールでのご連絡は benzine100@gmail.こむ スパム対策なのでこむをcomにかえてください。 


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