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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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投稿日:2024年03月29日(金)

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星への旅

投稿日:2009年03月11日(水)

吉村昭の影響は怖ろしい。本当に、眠れなくなった。

先日「少女架刑」を読みたくて購入した短編集『星への旅』には六編の作品が収められているが、徹頭徹尾、「死」を題材にしている。

「少女架刑」は十六歳で死んだ少女の死体が解剖される話。貧困家庭のため、死体は大学病院に売られ(劇中で香奠料として三千円が渡される)、学生たちによって切り刻まれる。

「透明標本」は「少女架刑」にも登場した人間の骨標本作りに執着する男の話。

「鉄橋」は、あるボクサーの轢死から始まり、轢死に終わる。途中、推理小説風になるが、結局は轢死。

「石の微笑」は、墓場から石仏を盗む手伝いをさせられる話。それに心中が絡んでくる。

「白い道」は空襲後の話。所々に死体が転がる道を帰る。

表題作の「星への旅」は、集団自殺をする青年たちの話。
「岩はいやなんだ、岩はいやなんだ、痛いからいやなんだ」


正直に書くと、かなり好きだ。

自分に死を愛好するという嗜好もないわけではないが、これらの作品はすべて、自分がかつて見た悪夢を忠実に再現しているように思えるのだ。もちろん、それはデジャブの一種で、作品を読んだことによって、頭のなかにあった夢の断片がストーリーを伴って再構成されただけだろう。さらには、不謹慎になるが、自分に眠る自殺衝動をくすぐられているともいえる。

しかし、だからといってこれらの作品が死に対する感情を麻痺させているのではない。まったく逆で、死への感覚が研ぎ澄まされる。(念のため、死にたいという気持ちが増すのではないことは断言しておく)

いわば、火葬場の炉の扉を見つめているときの気分にそっくりだ。

年をとるにつれ、嫌でも火葬場に行く回数は増える。耳の奥で、ヒトを焼くごおごおというあの音が、今も響いているよ。私も、いつか必ず、あそこに入るんだなあ。

死にたくないという切望と、死なんてただこれだけのことかという拍子抜けが同時に心のなかに発生する。そんなかんじ。









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無題

こんにちは。
怖い、話ですね。
私は吉村さんは未読ですが、ぜひ今度読んでみようと思います。

私も先日火葬場の扉と向き合いましたので、管理人さんの書かれていらっしゃることが、良く解ります。
まさしく、その通りだと思います。
”私も、いつか必ず、あそこに入るんだなあ”。
そして、その時の私がその光景を眺めることは出来無いんだというのは当たり前の事なのに、なんだか不思議な感じでもあります。

>>さくらさん

さくらさんこんにちは。

同じ吉村昭氏の作品で『戦艦武蔵』を読み終わり、今は『高熱隧道』を読み始めています。
どちらも人間の生き死にが描かれているのですが、淡々にして正確な描写は感傷とは無縁で、人間一人の死というものは、人類を一つの個体と見立てたときの、構成する細胞の入れ替わりに過ぎないのかとも思わされます。
自分が生き続ける限りは、関わった人間と同じ数の火葬場の扉を見ることになるのですから、小説の力を借りなくとも、いずれは達観する日が来るかもしれません。

メメント モリ

関連があるのか、わからないのですが、メメント
モリ、死を思うことが、瞑想だと聞いたことがあります。

>>uenoさん

uenoさんこんにちは。

uenoさんのコメントで思い出したのですが、昔読んだ瞑想の本に、究極の瞑想はすべての精神活動をストップさせ、死と同じ状態になる、というようなことが書かれていました。
つまり、見ている自分、感じている自分さえも消してしまう、完全な無の状態(これも本当はおかしな言葉ですが)に到達するのが目的らしいのですが、真偽の程は定かではありません。

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小瀬朧
性別:
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自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
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