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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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投稿日:2024年04月30日(火)

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悪夢フルセット

投稿日:2008年10月17日(金)

だから昼寝はするものじゃない。

また学校の夢だ。俺は夢のなかで夢と気づく。同じ夢を何回も見ていれば、自分がすでに学校に通う年齢でないことはすぐに思い出す。俺は話しかけてくる、中学・高校がごっちゃになったクラスメイトたちをひたすら無視し、この夢がどうなるか考えていた。

窓の外を見ると、形式のわからないヘリコプターとF-22が編隊を組んでゆっくりと飛んでいる。ありえない光景がいかにも夢だ。しかし、俺は漠然とした不安に駆られた。教室から走り出した。おそらくこれは終末の夢だ。

俺は階段を駆け下りる。今度は階段の夢か。とにかく今は地下に逃げることに専念する。だが、この学校に地下はなかった。思いがけず外に出てしまった俺は、校舎の正面に据え付けられた赤い警告灯がけたたましい音とともに明滅しているのを見る。警告灯の下にはボロを着たみすぼらしい爺さんがいて、これはなんだろうなあ、と俺に聞いてくる。爺さん早く逃げろ、と俺は叫ぶ。

これは最悪の夢だ。

俺は夢のなかで確信した。逃げる場所がない。空を見上げると、銀色に輝く物体がゆっくりと降下していた。よりによってこんな近距離で爆発されたら助かりようがない。爆心地、衝撃波、蒸発、地面に焼きつく人の影、不吉な言葉が次々に思い浮かぶ。いくら夢とはいえ、死にたくはない。せめて校舎の陰に隠れることができれば、即死は免れるかもしれない。生き残りさえすれば、根性で夢を終了させることができる。悪夢なら、目を覚ませばいいだけのことだ。

俺は校舎の陰を目指してはしっ――









普通なら、こういうときは目が覚めると思う。しかし、今回も目は覚めなかった。夢のなかで俺は死んだ。死んだ感覚というのも変なのだが、俺が夢のなかで体験する死は、「白と黒が同時に存在する世界」だ。灰色ではない。まばゆい光と暗黒が解け合っている、そういう世界に俺はなっている。「俺がいる」のでなく、俺がその世界そのものになっている。そういうヴィジョンなのだろうが、そこに自分と世界の区別はない。



夢は終わらない。

俺は死んだのだが、死の世界から夢の世界に引き戻された。夢なのだからなんでもありだろう。あえて理屈をつけるなら、幽霊になっている夢か。

俺は黒こげになった街にいた。生きている者は誰もいないようだ。誰もいないし、俺も死んでいるから、何もすることがない。

何もすることがないから、俺は目を覚ました。
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プロフィール

HN:
小瀬朧
性別:
男性
自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
メールでのご連絡は benzine100@gmail.こむ スパム対策なのでこむをcomにかえてください。 


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