投稿日:2025年01月22日(水)
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投稿日:2009年03月09日(月)
「少女架刑」をきっかけに、吉村昭に一気にはまり込んだ。私の体は、週に一度ぐらいの割で解剖教室に引き出され、学生たちの手に握られたメスで少しずつ刻まれていった。
皮膚はすべて剥がされ、眼球や爪や両鬢に残っていた髪までがいつの間にかなくなっていた。手足はむろんのこと、脊髄すら一個一個分解された。
(「少女架刑」より)
木箱が燃え崩れて、私の体は、焼却室の中にひろがった。
火の色は、華やかで美しかった。
(「少女架刑」より)
死んでしまった瞬間から、目や耳といった肉体の器官は機能していない。それでも、少女の死体は周りの様子を見たり、耳を澄ましたり、骨になってからも、骨壺のなかの温かさを感じたりする。小説という虚構なのはともかくとして、読後に、死に対する恐怖感の質が変わってしまった。ラストは、自分に取っては、夜眠れなくなるほどに恐怖を感じたが、人それぞれかもしれない。
死んでしまった人間の冷静な視点というと、現代の作品では、乙一の「夏と花火と私の死体」が思い浮かぶ。が、肉体と視点の離れ具合は「夏と花火と私の死体」のほうが著しい。肉体としての「わたし」はそこにいなくても、「わたし」がつねに語っている。
また、死体がモノとして扱われる作品というと、大江健三郎の「死者の奢り」が印象深い。こちらは大学病院の死体置き場での、死体運びの話だ。
投稿日:2009年03月01日(日)
原因は読書にある。こんな一節をノートに書き出してしまうのだから、よっぽど自分は末期なんだろうけれども、なんだかとっても愉快な気分になる。大量に本を読み、浩瀚な蔵書を誇りにしている人は、これを読んでどう思うのだろう。などと考えてしまうあたり、無様なまでに自分は病んでいる。本に埋もれて身動きとれないのは、他でもない、私だろうに。食物は食べることによってではなく、消化によって我々を養うのである。
(『読書について』斎藤忍随訳・岩波書店)
すなわち、紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。
投稿日:2008年08月29日(金)
新潮文庫版の『一千一秒物語』を読んでいる途中なのだが、とても面白い。稲垣足穂に辿り着いた経緯はひどく単純で、私淑する花村萬月先生の作品に何度かその名前が登場したからだ。ところで、私淑って言葉はつい最近覚えた言葉なんだけど、使い方あってるかなあ。高校生用の参考書に載っていた言葉だけど、俺はぜんぜん知らなかった。話がそれた。投稿日:2008年08月27日(水)
ブローティガンの短編に登場する小説家志望の気分を味わっている。そのうちタイプ役の男を連れて、編集役の彼女が現れるのではないかと妄想する。きっと他の人間の目には俺自身と俺の作品がそう映っているに違いない。投稿日:2008年07月24日(木)
読み終えるのにえらく時間がかかった。俺自身かなり病んでいるという自覚はあるのだけれど、花村萬月先生の作品に登場する<本物の馬鹿>と比べるとそんな自覚はかすんでしまう。劣等感の塊でしかない頭でっかちが自分以外の存在を否定し蔑み嘲笑するみじめな姿は、共感はされないだろうけど、おそらく誰もが生命の根源に持つ負のエネルギーの部分ではかすかに共鳴していると思う。簡単にいえば死とか破滅に向かうエネルギーとの共鳴だ。通常、それら負の共鳴は嫌悪や反撥といった感情あるいは吐き気や頭痛といった肉体信号として現れる。単純に笑い飛ばせないというのは地味に嫌な情況だ。さらに萬月作品は登場人物と自分を比べて、こいつらに比べたら俺はましだよな、という安直な相対化を許さない。脇役も含め、必ずどこかに自分の姿を発見する。今作だと主人公が小説家志望である時点で、もう俺には逃げ場なしだ。もう一人の主人公、団地住まいでたかが四畳半の部屋に積み上げられた本程度で「凡人を演じる天才」などと自分を規定する女子高生も、どこか自分をちくちく刺し続ける痛さがある。倫理だの論理だのほざく前に、他人の気持ちをこれっぽっちも想像できない、忖度する能力の欠如を嘆けよ、という感想を持っても、その半分以上は自分に跳ね返ってくる。いてぇ、いてぇ。竹の子書房
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