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ゆっくりと小説を書こう

小説の書き方やお役立ち本などを紹介するBlogです。「小瀬朧」名義で第9回ビーケーワン怪談大賞をいただきました。twitterでtwnovelや短歌などを発表中。

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ポンポンとボンボン

投稿日:2009年01月29日(木)

服や帽子の飾りで、ふさふさした丸い玉のようなもの、それって「ボンボン」っていうよね。

最近の流行なのか、テレビを見ていると耳あての先にその「ボンボン」が垂れ下がったニットキャップを身につけた芸能人が結構多いのに気づく。個人的に、あれが可愛くて凄く好きなんだ。

先日、ベビー用品の西松屋に行ったら、幼児用のボンボン耳あて付きニットキャップが売っていて、これを姪に被ってもらったらどんなに可愛いだろうと思った。しかし、姪はお帽子が好きではないので、ぜんぜん被ってくれなかった。

それでも、家に帰ってから、未練がましくネットでボンボン付きのニットキャップをいろいろ調べていたら、どうにもなんだか様子がおかしいことに気づいた。

あまりヒットしないのだ。

もしかしたら「ボンボン」と呼んでいるあの玉のような飾りの名前を間違っているのかと思って、家にあるファッション用語の辞典を調べてみたら、「ボンボン」なんて言葉はどこにも載っていない。

あれやべぇ、「ボンボン」ってのはもしかして方言か、と思って、今度は広辞苑を引いてみると、こう出ている。


ボンボン 【bonbon オランダ】
キャンディーの一。外側を頭製品で包んだ中にウィスキー・リキュールなどを入れた一口大のもの。さらにチョコレートでおおったものもある。「ウィスキー・―」


まったくファッション関係ないじゃん。あれえ?

だけど、ネットで「ボンボン」を検索すると、それなりに期待したものがヒットする。おかしいな。あの玉のような飾りには「ボンボン」以外の呼び名があるのだろうか。

これが、本当に、結構悩んだ。

そして、ふと思って広辞苑を引き直してみた。


ポンポン【pompon フランス】
(1)帽子や洋服などにつけて飾りとする、毛糸や羽毛で作った丸い玉。
(2)応援用にチア・ガールが打ち振る、毛のふさふさした飾り物。


あー、なるほどね。

ようするに、自分はこう間違えていたわけだ。


×ボンボン(b)

○ポンポン(p)


うーん。でも、たしかにうちの周辺ではbの子音の「ボンボン」って呼んでいたけどなあ。小学校のときのマーチングバンドでも「ボンボン」って呼んでいたよ。ちなみに「ボンボン」は、太鼓やトランペットといった目立つ役になれなかった、その他大勢の子がやる役だったから、みじめなかんじがしたよ。なんてことをうっかり書くと、小学校時代にそういう思い出があるあなたが、真っ赤になって怒るかもしれないから、文章を書くのって怖いよね。当然、最初はみんな太鼓やトランペットをやりたい。でも、くじ引きであぶれちゃってしぶしぶボンボンになってしまう。可哀想なのは子どもだけじゃなくて、親もだよね。うちの息子はトランペットなんですよ、と自慢する親の横で、ボンボンの子の親がつまらなそうに話を聞いている。そして、そんなトランペットかボンボンかで子どもの価値は決まらない、とちょっとした悟りにも近い負け惜しみを胸のうちで呟いたりするのだ。でも、もっと可哀想なのは、せっかくトランペットになれても、音楽の資質がないために、いつまでたっても指使いが覚えられなかったり、音を出すことができなかったりで、脱落してしまう子だ。その他大勢のボンボン行き、さようなら。

人生、だよね。

ところが、もっと可哀想な子は他にもいる。あ、この話、まだ続くぜ。運良く、トランペットになれた子は、その後が悲惨だったりする。小学校のマーチングバンドごときの、くじ運だけの、たまたま音がだせて指使いも覚えられたぐらいの、その程度のことでちょっと自分を勘違いしてしまう子がそうだ。その子は中学生になって、小学校時代にトランペットをやったという華々しい記憶だけを頼りに、吹奏楽部に入ってしまう。くじ運の良さと音楽センスの間に何ら関連性はないのに、だ。吹奏楽部の先輩も顧問も、そんな本質を知るわけがないから、経験者大歓迎とばかりにその子をちやほやする。

ところがだ。

もともとその子には音楽の資質がなかった場合はどうなるだろう。いくら練習しても、まったく巧くならない。小学校のマーチングバンドではとにかく大きな音をだせば褒められたのに、吹奏楽部ではそれが通用しない。楽譜の読み方だって知らないし(マーチングバンドでは楽譜じゃなくて指番号を書いた紙だった)、リズム感もなければ、微妙な音の狂いを聞き分ける耳もない。本人はがんばっているつもりなのに、テンポが遅れているとかピッチがずれているとかと怒られっぱなし。さらに悲惨なことに、中学生は「努力」という言葉を一番信奉している時期でもあるから、とにかくがんばればなんとかなるんじゃないかと、本気で信じている。不幸なのは、吹奏楽部には「ボンボン」という受け入れ先が存在しないことだ。辞めない限りは、ずっとトランペットだ。そして、顧問からは見放され、同級生からは同情の目で見られ、下級生からはダメな先輩と嘲笑されながら、三年間を過ごすのだ。同じとき、小学校時代にボンボンの屈辱を味わったその他大勢の子たちは、音楽なんてものに手を出そうとはまったく考えず、明るく楽しい中学校生活を送っていたりする。

誰のことかは、知らんけどな。


それはともかく、今も「ボンボン(bonbon)」と連呼してしまったけど、これからはちゃんと「ポンポン(pompon)」としようかなっと。


ただ、それだけの話。


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小瀬朧
性別:
男性
自己紹介:
創作怪談、twitterの短文小説#twnovel、短歌など。
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